京都ALS女性殺害事件に対する声明  SSKA頸損No.131

SSKA頸損No.131 2020年6月17日発行
PDF 京都ALS女性殺害事件に対する声明

京都ALS女性殺害事件に対する声明

全国自立生活センター協議会
認定NPO法人DPI日本会議
NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会
NPO法人境を越えて
呼ネット(人工呼吸器ユーザーネットワーク)
バクバクの会~人工呼吸器とともに生きる~神経筋疾患ネットワーク
(順不同)

 私たちは、どんなに重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、地域の中で共にある社会の実現を目指して活動する障害当事者団体です。
 京都市で昨年11月、筋萎縮性側索硬化症(ALS)で障害福祉サービスの重度訪問介護を利用し、24時間の介助体制で自立生活を送る林優里さん(当時51歳)を殺害したとして、元厚生労働省技官で医師の大久保愉一容疑者と、医師の山本直樹容疑者が逮捕されました。捜査関係者によると、林さんは以前から周囲に「安楽死させてほしい」と話しており、2人とは会員制交流サイト(SNS)を介して知り合い、直接の面識はなく、林さんからの依頼を受けて、昨年11月30日夕方、京都市にある林さんの自宅を訪れ、大量の薬物を投与し、殺害したとみられています。大久保容疑者は「高齢者は見るからにゾンビ」などとネットに仮名で投稿し、高齢者への医療は社会資源の無駄、寝たきり高齢者はどこかに棄てるべきと優生思想的な主張を繰り返し、安楽死法制化にもたびたび言及していたとのことです。そして、とうとうALSという難病により常時介助を必要とする重度障害のある林さんの死に手を下してしまいましたが、この行為にSNS上で多くの人が容認する意見を寄せていることは、すべての障害のある者にとって恐怖以外の何物でもありません。また報道では、「安楽死」という言葉がクローズアップされていますが、『この事件はネットを介した殺人に他なりません。』
 また、今回の事件を受けて、「安楽死法」「尊厳死法」の議論を進めようと言った主張が持ち出されてきていますが、安楽死・尊厳死の合法化などもってのほかです。生きているのが辛いから自ら死を選ぶという意味では、尊厳死も安楽死も自殺と一緒ではないでしょうか。自殺対策大綱で「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指す」と掲げ、国をあげて自殺率を減らそうとしている一方で、尊厳死や安楽死を法制化しようというのは矛盾以外の何者でもありません。自殺者としてカウントしなければ良いという問題ではないと考えます。
 被害者の林さんは24時間介護サービスを受けていて、地域生活・自立生活が保障されていても、このような殺人事件が起きてしまいました。そして、SNSを通して多くの人が、安楽死を強く望んだ林さんに同情と賛同を寄せていることの根底には、「生産性のない重度障害者は生きる価値がない」という誤った論調があります。
 そもそも人は本来生きていることそれ自体で認められるべきなのです。怖いのはいつも命に対して少数派が除外され、多数派の価値で測られ、それが全てであるかのように扱われることです。
 私たちは、被害者の林さんがどのような悲しみを抱えていたか、介護現場が抱えていた課題は何なのかを検証することを求めます。そして、障害を理由に「安楽死させてほしい」と思わなくてもよい社会の構築を訴えます。
 私たちは、これからも社会的サポートが必要な人でも一人の人間として尊重され、「生きる権利」が大切にされる社会、「生きる」選択が妨げられることなく、だれもが自分らしく最後まで生きたいと思え、それが当たり前に叶う社会の在り方を強く訴え続けていきます。


関連記事:

カテゴリー: 機関誌「頸損」記事 パーマリンク