「障害者差別解消法」見直し検討の動向 SSKA頸損 131号

SSKA頸損No.131 2020年6月17日発行

「障害者差別解消法」見直し検討の動向

PDF 「障害者差別解消法」見直し検討の動向

副会長 八幡孝雄

 内閣府の障害者政策委員会(以下、政策委員会)から、「障害者差別解消法(以下、差別解消法)の施行3年後見直しに関する障害者政策委員会意見」が6月22日に出されました。
 内閣府「障害者政策委員会」ホームページに、検討の経緯、意見書が公開されています
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/index.html
 法律改正に直接結びつく意見はありませんが、たった一文、次の見直しの方向性を見て、民間事業者の合理的配慮が義務化される改正につながって欲しいと、強く思っています。

「事業者による合理的配慮の適切な提供の確保」について
事業者による合理的配慮の提供については、建設的対話の促進や事例の共有、相談体制の充実等を図りつつ、事業者を含めた社会全体の取組を進めていくとともに障害者権利条約との一層の整合性の確保等を図る観点から、更に関係各方面の意見等を踏まえ、その義務化を検討すべきである。

 法律の見直し検討は、「障害者権利条約(以下、権利条約)の理念尊重と整合性の確保」等に配慮しつつ、4つの論点「1.差別の定義・概念について」、「2.事業者による合理的配慮の提供について」、「3.相談・紛争解決の体制整備について」、「4.障害者差別解消支援地域協議会について」に絞って、見直しの方向性が出されています。
 各論点の見直しの方向性は出されましたが、実効性のある差別解消法に改正しようという気持ちが感じられません。積極的に意見発信、問題提起した政策委員の皆さんの意見が、十分反映された意見書になっているとは、とても思えません。
 伝聞ですが、障害当事者委員、関係委員の皆さんが、どれだけ発言しても、取りまとめ文書に書き込んでもらえず、政策委員が何人か集まって「障害当事者や家族の意見を反映した意見書」にしてくれるように、事務局へ申し入れたとも聞いています。
 国は、真剣に差別解消法改正を行い「障害に基づく差別を禁止して、平等な機会・チャンス・扱い(待遇)を保障する法律」にする気があるのか、とても疑問を持って状況を見ています。
 障害者差別解消法は、障害者基本法(以下、基本法)「第4条差別の禁止(基本原則)」を実現するための法律です。
 基本法は日本の障害者施策の方向性を示す羅針盤であり、2011年(平成23)の改正では、権利条約の「障害の社会モデル」の考えを取り入れ、「障害を理由とする差別の禁止」の項を追加しました。ですが条文各所に「可能な限り」云々とあり、権利条約の理念である「あらゆる活動への機会を均等に保障」する法律とはなっていません。
 以上のような基本法の下、差別解消法の改正議論が行われていたのです。早急に、権利条約の理念に則った、差別解消法、障害者関連法案を後押しする基本法の改正を行い、実効性のある改正検討が行われるべきと考えています。

 政策委員会で検討された、差別解消法改正検討の4つの論点について、問題だと思っていることの一部を、簡単に書き出してみます。

■論点1「差別の定義・概念について」の問題点
 権利条約は「障害に基づく差別」を定義し、直接差別のみならず、合理的配慮の不提供を含む、あらゆる差別を禁止することを締約国に求めています。
 しかし差別解消法には「差別」の定義がありません。「不当な差別的取扱い」「合理的配慮の不提供」の定義もありません。何が差別であるかを明確に示さなければ,差別をなくしていくことはできませんから「差別」の定義を明確にすべきです。
 直接差別、間接差別、関連差別、また女性障害者の複合差別についても規定すべきと思っています。基本法も、権利条約に則って改正する必要があります。

■論点2「事業者による合理的配慮の提供について」の問題点
 現在、民間事業者による合理的配慮の提供は努力義務とされ、合理的配慮は障害者からの意思表明があった場合に対応しなければならないとされており、意思表明がなければ配慮義務がないような文言になっています。
 意思表明が困難な人はたくさんいます「障害者がいる場合は、必要な合理的配慮をしなければならない」と規定すべきです。合理的配慮に伴う負担が過重という場合は、提供事業者が理由の立証責任を負う事を明示すべきです。また民間事業者による合理的配慮の提供の実効性を担保するため、公的な助成制度を創設する必要もあると考えます。

■論点3「相談・紛争解決の体制整備について」の問題点
 国及び地方公共団体は相談に応じると定められているが、相談窓口が一本化されていないので、実効的な相談を期待できない状態です。相談窓口の具体的な権限は不明確で、市町村と都道府県の関係や役割も不明確。相談者のお話を聞くだけで、たらい回しにされた相談者もいたと聞いています。
 差別に関する相談受付から、個別紛争の実効的な解決につなげる、確実な助言、調整、指導の権限を持つワンストップ機関を設置すべきです。

■論点4「障害者差別解消支援地域協議会について」の問題点
 障害者差別解消支援地域協議会とは、障害者差別解消法施行に先行して、障害者を取り巻く環境が異なる各地方公共団体等が、障害者差別解消を地域の特性を踏まえて主体的な取り組みを進める地域協議会だったそうです。
 旗を振った内閣府は、差別解消法施行時には、他の地方公共団体等が地域協議会を組織する際のモデルとしての役割を担うことを期待したようですが、都道府県、政令指定都市の設置率は100パーセントでも、一般市町村の設置率は半数で、ほとんど機能していないようです。
 障害者差別解消支援地域協議会の設置を促進すると共に、活性化を図る方策が必要です。
 今回の差別解消法の改正見直しでは、実効性ある法改正を望めないと思います。今後も、多くの仲間と協力して根気強く働きかけを続けねばなりません。皆様、宜しくお願い致します。


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