特集 障害者権利条約・基本合意・骨格提言の実現めざす「基本合意10年全国集会」に400人が集う SSKA頸損 130号

SSKA頸損No.130 2020年2月25日発行

障害者権利条約・基本合意・骨格提言の実現めざす

「基本合意10年全国集会」に400人が集う

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報告者八幡孝雄

 2020年1月7日、障害者自立支援法違憲訴訟の基本合意(2010年1月7日)から10年目の全国集会が、障害者自立支援法違憲訴訟団の主催で、参議院議員会館に於いて開催され、約400人が集まった。
はじめに
 障害者総合支援法施行前、2006年成立の障害者自立支援法は、障害者が保健福祉サービス経費の1割を負担する「応益負担」を原則とした。支援の必要な重度障害者ほど負担額が多くなり、利用を控えざるを得ない状況を生み出した。これは憲法の定める「法の下の平等」に反し、「生存権」を侵害し、「個人の尊厳」を毀損するものであると、訴訟を起こした
 2010年1月、国は、障害者自立支援法が障害者・家族の尊厳を深く傷つけたことを認めて和解。「法の廃止と新法制定を確約」し、それは「憲法等に基づく障害者の基本的人権の行使を支援するものであることを基本とする」と「基本合意文書」で約束。それに基づく定期協議(検証会議)を毎年開催しているが、未だ約束は完全履行されていない。
<全国集会>
 基本合意から10年の全国集会は、合意で国が約束したことの履行状況を確認し、会場の皆さんと問題意識を共有して、今後の運動の方向性について考えるものであった。


会場風景

挨拶から
 主催者挨拶で、竹下義樹弁護団長は、「2006年に障害者自立支援法が施行され、いみじくも同年12月に障害者権利条約が国連で採択された。国内では悪法が、国際的にはわれわれが依って立つ条約が成立したのだ。これを出発点として私たちの戦いが始まり、障害者の悲痛な叫びや怒りを集めて訴訟に持ち込もうという話になった。 2010年の「基本合意」から10年目となる本年、日本の障害者政策が国連の障害者権利委員会の場で審査される。本日の集会は、夏の審査に向けて「基本合意」の達成度を評価し、次の10年を迎えるための一つの節目としたいと、話された。
 来賓の小椋武夫(全日本ろうあ連盟理事)は、障害者団体は相互理解をしながら一つになって運動を展開していくことが大事」と挨拶された。
 連帯挨拶で、呼びかけ人の香山リカさん(精神科医/立教大学教授)は「障害者に、してあげてるという意識がまだあるのではないか。上から目線のようなものを感じる。障害者になると生きにくくなる社会である、全ての人がエンジョイできる社会をつくるために頑張っていきましょう」と呼び掛けた。
 舩後靖彦、木村英子、横沢たかのり、阿部知子、倉林明子、宮本徹、福島瑞穂(メッセ―ジ代読)各国会議員の連帯挨拶の中で、「重度障害者の社会参加を拒んでいるのは、国の施策である」「誰かを排除しながらの国づくりはおかしい」と言ってくれる人がいることは嬉しく、運動の力になる。
基調講演
 基調講演で佐藤久夫さん(日本社会事業大学名誉教授・元総合福祉部会長)は、「障害者福祉における基本合意の意義」について話された。「介護保険と障害者福祉の現状として、介護保険は制度的に後退しているが、障害者福祉は少しずつ改善されてきている」ということが、強く印象に残った。
 弁護団報告で藤岡毅(弁護団事務局長)は「違憲訴訟・基本合意・定期協議の意義」を述べ、障害者総合支援法が自立支援法の一部改正に過ぎなかったこと、基本合意を確実に実現するために「基本合意・骨格提言・権利条約」は重要な武器であり、法整備の羅針盤であると話された。
パネルディスカッション
 パネルディスカッション「人権訴訟からみえる障害福祉施策の近未来」は、コーディネーターの藤井克徳(めざす会)・國府朋江(弁護団)さんの進行で、パネリストは原爆症認定集団訴訟弁護団=石口俊一(弁護団)、優生保護法被害弁護団=藤木和子(弁護団)、浅田訴訟弁護団=呉裕麻(弁護団)、DPI日本会議=今村登(次長)、障害者自立支援法違憲訴訟原告=車谷美枝子(兵庫)、家平悟(東京)さんであった。
 浅田訴訟(注1)の呉弁護士から、「介護保険と自立支援給付は目的も対象者も異なるものである。介護保険優先原則(自立支援法第7条)は、介護保険給付と自立支援給付の二重給付防止規定である」という原告勝訴判決が確定した、もう介護保険優先原則という言葉は使うべきではないと、個人的には思うという話に、大いに勇気を頂いた。
 家平悟さん(頸損)は、「権利条約・基本合意・骨格提言は、障害者の基本的人権の保障は国に責任があると明記しているしかし、現在の社会保障制度改革は、『自己責任』『家族責任』を強調していて、基本合意とは相容れないものである」と、車谷美枝子さん(障害当事者)は「家族依存ではなく障害者が社会に出ていけるような社会を」と訴えた。
閉会挨拶
 アピールを採択後。閉会挨拶で太田修平さん(めざす会事務局長)が「10年後もあきらめない運動を続けて社会を変えていこう」と力強く呼び掛け、散会となった。
最期に
 「障害者をはじめ誰もが安心して暮らせる社会」を作るには、基本合意、骨格提言、障害者権利条約等を武器にして、あきらめることなく、根気強く運動を続ける事が大事であると、再認識させられた集会であった。
(注1)65歳問題を問うた岡山の「浅田訴訟」とは?
 浅田さんは、65歳になる前に「介護保険サービスを受けると1割負担が発生し、年金暮らしでは生活できなくなる。また、長時間のヘルパー利用ができ、外出先や宿泊の支援もできる“重度訪問介護”のようなサービスは介護保険にはないため、今の生活が一変してしまうので、障害福祉サービスを継続できないか」と市に相談するも、親身に対応せず。
 その後、介護保険の申請をしなかったため、65歳になったとたんに障害福祉サービスを全面的にカットされ、このことを不服として起こした裁判が浅田訴訟である。
2018年12月に全面勝訴した確定判決では「障害者総合支援法と介護保険法では目的が異なる」「個別の事情も考慮する制度で、一律な介護保険優先ではない」と、裁判所は基本合意文書で介護保険優先原則の廃止を国が検討すると約束していることも重視して「介護保険優先原則(総合支援法第7条)=介護保険優先」ではないと明確に判断した。
 これは65歳になる全国の障害者にも当てはまることであり、自治体が本人の意向を無視して介護保険へ強制的に移行することはできなくなった。


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